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教育現場の課題を解決するには…教員と保護者の声を訊け

第33回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■教育現場から聞こえてくる不安の声

 授業についていけない子が増えていることは、教員も承知しているのだ。しかし、休校中の遅れを取り戻すことが大前提として突きつけられている。宿題や課題をクリアしている子と、できていない子が一緒に授業する上で、どのように学習を進めていけばいいのか悩んでいる職員は少ないないだろう。

 しかも、時間が足りない。授業時間が短縮されていることもあるが、それ以外にも授業時間が短くなってしまう理由がいくつもある。

「朝一番の健康観察カードは1人ずつチェックして入室させている。忘れている子がいれば、検温と健康チェックをしなければならないので、授業開始時間を考えると焦ってしまう。また、感染防止のために、子どもたちには『喋らない、立ち歩かない』を原則として伝えているので、プリントを配るのも回収するのも教員がしなければならない。そういった積み重ねによって、学習が遅れてしまう」

 それ以外にも、学校の感染対策に不安を感じている保護者も多い。

「どうしても子どもたちは密着します。教員が全員を把握できているわけではありません。下校時にマスクを外して大声で話しながら歩いている子も多く見かけます。手洗いなども、教員からの注意が減るといい加減になっている子どもがいるとも聞いています。もちろん、学校の子どもが自覚してやるべきだとは思いますが…」

 このような生活面に関しても、教員たちは気にしていないわけではない。それどころか、次のような声すらある。

「子どもを叱る回数は確実に増えています。私たちも叱りたくはない。でも、子ども同士がくっついていれば叱らざるをえない。提出物の点検、検温、寄るな、触るな、喋るな、マスクをつけろ…。どんどん子どもたちを追い込んでいるようで、イヤになる」

 保護者の学校に対する期待は大きい。そして、教員も心を痛めるほどに対応している。ところが、物理的に十分な対応が難しいことは事実である。
 このままでは、教員と保護者の溝はどんどん深まっていくに違いない。子どもたちにしても、学習面はハードになり、生活面では口うるさく注意されることになり、苛立ちを募らせるばかりになっている。

 問題は、現場で起きているのだ。
 文科省も教育委員会も、休校中の学習の遅れを取り戻せと直接的に、間接的に学校へ命じている。さらには、3密(密閉、密集、密接)を避けて手洗いを徹底させるなどの「学校の新しい生活様式」の実行を教員に迫っている。「あれをやれ、これをやれ」だけで、現場の状況を理解しているとは、とても思えない。
 会議室で決まった結論は現場を混乱させるだけのことになっている。会議室に必要なのは、「問題は現場で起きている」という発想である。

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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